オルゴールの種類の中で歴史的にも、又オルゴールの発明としても重要な位置にあります。
シリンダーオルゴールは、1796年スイスのジュネーブの時計職人アントワーヌ・ファーブル(Antoine Faver 1767-1828)によってベルとハンマーのないカリヨンの製作を成功させて、初めて世に出されました。
ベルの代わりに櫛歯(コーム)を使い、ドラムに植えられたピンではじくことで音の響きを作りました。
ドラムに小さな穴を開け、ピンを一本一本植えていきます。ドラムの内側をのりで固定し、ピンの頭の高さを揃えるために、ヤスリで平らに削り上げます。
1000本から2万本ものピンを50〜100分の1ミリの精度で植え付ける為に職人の手に高い精度が要求されました。
音階を持つコームは硬いハガネが選ばれ、純正調と平均律の中間、音に濁りのない調律法が選ばれました。選曲が済むと、マスターコームが造られます。マスターコームの弁を一本一本指で弾いて耳に採り、コームの裏側 にある鉛をヤスリで削って音を作っていきます。
この調律の作業は、静かな空間を要したために、自宅で夜の作業として行われた時代がありました。オルゴールで特質すべき機構はガバナーの出現です。
ゼンマイの力を平均して解かす為に考案されました。空気抵抗を受けてゼンマイの解ける時の不自然さを瞬時に解消し
ながら演奏を滑らかにします。
主にオルゴールにしか見られない独特の機構です。キャビネットの材質は日本で堅い楢の木に似たオーク材が好んで選ばれました。
良質の音色を出すこと、低音と高音のバランスが取れていること、音の浸透生の優れたもの、音量を上げることなど材質の違いからマイスターの好みの音が創られます。
オルゴールはムーヴメントの金属の音、内部を見せる為に使われるガラスの音、そして最も重要な木の材質から影響されてオルゴール独特の不思議な響きを造っています。
他に比較してシリンダーオルゴールが透明で内面的な音を持っているのは、それぞれの材質を厳密に生かす職人達の感性に負うところが大きく、それ故にそれぞれマイスターの持ち味の優れたオルゴールが生まれました。
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